借家が一般的な時代にあっては、間取りを描いて自分の将来の住まいを連想して楽しむという行為は、ほとんどなかったように思う。言い換えれば、間取りを描きながら住まいを空想し、将来の住まいを考えるという行為は、巨額の資金を投資して自ら家を持つという持ち家制が普及し始めた頃に起こった現象と考えられるのだ。単なる空想は非現実の夢でしがないが、所有できる可能性があってはじめて、空想も楽しみとなる。こう考えてくると、「間取り」を描いたり、あるいは、拡がれたものを眺めたりして楽しむという行為が一般の人々の間で日常化するのは、まさしく、近代以降の「持ち家」化とともに起こった現象、と考えられるのである。近代はわれわれの住まいと生活が急速に変化してきた時代である。それまでの数千年にわたって中国を中心とする東洋文化圏の一国として変化・発展してきたものが、一転して欧米文化を取り込みはじめた。その変容の過程は、多くの人々が住まいを求めて自由に描いてきた「間取り」に残されている。
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